映画『We Love Television?』 感想

先日のニコニコ生放送ドキュメンタリー映画に興味が高まっていたのもあり、
出演していた土屋元日テレプロデューサーの作品『We Love Television?』が11月3日から公開と
タイミングが良かったので観てきた。


この作品を選んだのは偶然だったけれど観て良かったというのが感想。

正直萩本欽一氏には馴染みがないし、
テレビ番組制作の模様を追ったドキュメンタリーという説明だったので、
面白いと思うかわからないままの鑑賞だったけれど、
それは大きく裏切られ、確かにドキュメンタリーとして価値のある作品だと感じた。


意外だったのは欽ちゃんが理屈をもってテレビをやっていたのが分かったことで、
それはこの作品のテーマでもあった。

そんなイメージは全く持っていなかったので全編を通して刺激を受けたし、感銘を受けたところもたくさんあった。


特に印象に残った言葉は
”最近の若い人たちは安心したいという気持ちが強い”
と。
”安心というのは気持ちが落ち着いた状態だから、そんなやり方で作っても面白いものはできない”
んだと。


そして欽ちゃんなりの哲学、
最後の最後、本番で100%に持っていくように
打ち合わせなりリハーサルを進めていく。

台本や演出で予定調和を作らずに、
最後の最後まで考える、
一番いいものを本番に出す。

そういった考え方は自分の考えと一致するので、
欽ちゃんてそういう人だったんだという驚きと、
それを追求する情熱・熱意に感動し、
活力をもらうことができた。


次に印象的だった言葉は、
”視聴者の先を見すぎてはいけない。”
”見ている人がついていけないものを作ってはいけない。”。

ほんとに理論的だし、テレビというものをこんな風に考えて作ってきた人なんだということは正直驚きだったし、とても見本になる考えだと思った。

実際欽ちゃんが共演者やスタッフに語る言葉、投げかける言葉が
みんななるほどという言葉ばかりだし、
参考になる考え方ばかりだし、
熱意も真剣さもあるし、
リーダーとして理想の引っ張り方はこんなだと思った。


これはテレビのドキュメンタリー番組でもできなくはないけれど、ここまでじっくり見せていくのは、土屋監督も言っていたけれど映画じゃないと難しい。

でも個人的には全然飽きないと思うんだけど。


で、鑑賞した回は土屋監督と原一男監督のアフタートークのある回だったのだけど、欽ちゃんのこういう一面は実はあまりクローズアップされていなかったんだと。

ドキュメンタリー作品として成り立つかは別として、そういう面を残しておけると思って撮っていたんだと土屋監督は話していて、その軸は完成した作品でぶれていなかったと感じた。

原監督からは、これは映画なのかということをかなりの時間を割いて問いかけていたけれど、それは残念ながら自分はドキュメンタリー映画には無知なので判断できない。
ただ、インタビュー形式にはしなかったんだという話はしていた。
それとテレビ番組制作者の監督した映画というところの、作りの話は少し専門的。


見始めて最初に思ったことは、
欽ちゃんはテレビの黄金期を作った人で、
今テレビは斜陽なのだけど、
最後の言葉は
”制作に関わる一人一人がどうするかを考えて行動しなくちゃいけない、そしてそれはテレビ業界に限らない”
んだという、
これは字幕で出ていた言葉で欽ちゃんの考えを表しているのかわからないのだけど、
自分も心からそう思うのと同時に、
別の業界にも言える事だという言葉が付いていたのには正直びっくりした。

つまりタイトルが『We Love Television?』であるのに、そういう言い方をしているところに強いメッセージを感じた。


私にとってはそういう哲学の感じられる良い作品、人生に活力を与えてくれる作品でした。

それにしても日テレの製作なのにテレビで一切宣伝していないのはなぜだろう。
舞台挨拶有の回であるにも関わらずお客さんも半分程度しか入っていなかった。